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糸柳ブログ

2022.12.02糸柳便り

火山性温泉・非火山性温泉とは?日本の火山性温泉7選

古くから多くの人に愛されている温泉は、「火山性温泉」と「非火山性温泉」に大別することできます。

温泉には何となく火山や地中の熱が関係していることは知っていても、どのように温泉ができるのかまでは知らない方も多いでしょう。

当記事では、火山性温泉と非火山性温泉の違いを詳しく解説しますので、火山と温泉の関係性について知りたい方はぜひ参考にしてください。また、日本各地に点在する有数の火山性温泉も7つ厳選してご紹介します。

 

1.火山性温泉とは?

火山性温泉とは、火山の地下にあるマグマ溜まりを熱源とする温泉のことです。

火山地帯の地下には、高温のマグマ溜まりが存在します。地表に降った雨や雪は、一部が地中にしみ込んで地下水となります。その後、地下水がマグマ溜まりの熱で温められ、人工的なボーリングや断層の割れ目によって地表に湧き出たものが火山性温泉です。

地下水の加熱方法は、「地層を通して温める」「マグマ溜まりから上昇する高温流体と交わる」の2通りがあります。マグマから発生する高温流体を「火山ガス」と呼び、火山ガスは水蒸気(H2O)を多量に含んでいます。火山ガスの主成分は、以下の4つです。

  • 塩化水素(HCl)
  • 二酸化硫黄(SO2)
  • 硫化水素(H2S)
  • 二酸化炭素(CO2)

上記の成分を含んだ温泉水はいずれも酸性で、地表へ移動する途中で周囲の岩石に含まれる金属成分を溶かします。その際、ガスの主成分と金属成分が中和反応を起こし、以下の3種類の泉質が生じます。

  • 塩化物泉
  • 炭酸水素塩泉
  • 硫酸塩泉

世界各地の火山地域の温泉水は、基本的に塩化物泉水です。一方で、特に火山活動が活発な地域では塩酸と硫酸を含む「強酸性の温泉」が見られることがあります。

 

2.非火山性温泉とは?

火山性温泉が火山活動によって形成された温泉を指すのに対し、非火山性温泉は、火山活動とは直接関係なく生じる温泉のことを指します。非火山性温泉の種類は、以下の2通りです。

  • 深層地下水型
  • 化石海水型

以下では、深層地下水型と化石海水型の違いを説明します。

 

2-1.非火山性温泉(1)深層地下水型

地温は、地表から地下へ100メートル深くなるごとに2〜3℃ほど上昇すると言われており、これを地温勾配または地下増温率と呼びます。地下水が地下深くの地熱を熱源として温められ、地面の割れ目やボーリングなどによって湧き出たものが「深層地下水型温泉」です。

また、マグマとは異なる高温の岩石が地下に存在するケースがあり、この岩石が熱源となって地下水が温められたものも深層地下水型温泉であると考えられています。

深層地下水型温泉の特徴には、以下が挙げられます。

  • 火山性の温泉よりも温度が低い(高いもので40℃)
  • アルカリ性が高い

深層地下水型温泉は溶けている成分が少なくアルカリ性が高いため、入浴後に爽快感が得られるのが特徴です。

 

2-2.非火山性温泉(2)化石海水型

地中には、太古の地殻変動によって古い海水が閉じ込められていることがあります。閉じ込められた古い海水を「化石海水」と言い、化石海水が地下増温率によって温められ、湧き出たものが化石海水型の温泉です。

化石海水型の温泉には以下の特徴があります。

  • 塩分を多量に含んでいる
  • 25℃以下でも温泉と定義される
  • 地域によって泉質に違いがある

温泉法では、温泉の定義を「地中から湧出する温水、鉱水および水蒸気その他のガスで、摂氏25℃以上または温泉法で指定されている温泉成分を含むもの」としています。

出典:環境省「温泉の定義」

化石海水のある場所が地表から数百メートルと浅い場合は温度が低いため、温泉の温度が25℃以下になるケースも少なくありません。この場合でも、化石海水は塩分を多く含むことから温泉と認められています。

また、泉質は化石海水が取り込こまれた堆積層の環境条件でも変化します。地域によって泉質に違いがあるのも、化石海水型温泉の特徴です。なお、海岸に近い地域では、現在の海水が混入しているケースもあります。

 

3.火山性温泉で有名な温泉は?

日本は環太平洋火山帯の中でも火山活動が最も活発な地域で、3,000か所を超える温泉地を有する温泉大国です。

地図で日本の火山分布と温泉分布を見てみると、火山分布が日本列島を南北に縦断しているのが分かります。温泉分布は火山分布に沿うように広がっており、知床半島、北海道南西部、東北脊梁地帯、伊豆半島、山陰日本海側には高温の温泉が集まっています。

火山性温泉で有名な温泉は?

出典:神奈川県 温泉地学研究所「I−2. 日本の温泉」

日本の温泉文化は外国人観光客にも大変人気があり、貴重な観光資源です。

国内の有名な火山性温泉地には、ニセコ(北海道)、酸ヶ湯(すかゆ)(青森)、玉川(秋田)、那須(栃木)、箱根(神奈川)、別府(大分)、雲仙(長崎)などがあります。以下ではそれぞれの温泉地の特徴を紹介します。

 

3-1.ニセコ温泉

北海道の南西部に位置するニセコは、アイヌ語で「切り立った崖の下を流れる川」を意味します。ニセコは東西に連なる火山群によって、泉質豊かな温泉が多量に湧き出す温泉地です。

豊かな自然環境が魅力のニセコ温泉は、東西に延びる火山帯周辺に温泉が多数湧き出しており、日帰りの温泉施設も多くあります。また、ニセコの温泉を気軽に楽しめる「ニセコ湯めぐりパス」も販売されています。

 

3-2.酸ヶ湯温泉

青森県青森市の八甲田山にある酸ヶ湯温泉は、その名の通り酸性の療養泉を特徴とする温泉です。酸ヶ湯温泉の近くには第四紀八甲田火山の名残である「底なし沼」があり、噴火口からは現在でも硫気ガスが発生し、70〜90℃の熱湯が湧いています。

酸ヶ湯温泉には、全国的に有名な「千人風呂」があります。酸ヶ湯温泉旅館の「ヒバ千人風呂」は総ヒバ造りの壮大な大浴場で、現代では珍しい混浴です。なお、混浴に抵抗のある方には男女別の小浴場「玉の湯」もあり、日々多くの湯治客が訪れています。

 

3-3.玉川温泉

秋田県北東部の仙北市にある玉川温泉は、「日本一の湧出量」と「日本一の強酸性」を誇る温泉です。

玉川温泉は江戸時代の初期に発見されましたが、当初は強酸性の泉質が人々の生活にさまざまな影響を及ぼし、苦心してきた歴史があります。その後、水質の除毒や湯の華の採取に時間を費やし、湯治場として発展しました。

玉川温泉は本州最北端の国定公園「十和田八幡平国立公園」の中にあり、「玉川温泉園地自然研究路」を通じて散策や天然の岩盤浴が体験できます。

 

3-4.那須温泉

栃木県の那須温泉郷は、那須連山の主峰・茶臼岳の山腹に散在する温泉の総称です。なお、茶臼岳は栃木県唯一の活火山としても知られています。現在では那須湯元温泉や大丸温泉をはじめとした「那須七湯」が有名で、那須七湯に新那須温泉を加えて「那須八湯」とも呼ばれます。

那須温泉郷はそれぞれの温泉で効能や泉質が異なり、一度訪れるだけでさまざまな温泉を楽しめます。

 

3-5.箱根温泉

箱根温泉は神奈川県の箱根町内に湧出する温泉の総称で、年間の宿泊者数が全国1位の人気温泉地です。箱根火山のカルデラの内側に位置する箱根温泉の源泉は345か所もあり、「箱根十七湯」と呼ばれる大小17の温泉地が集結しています。

東京からのアクセスがよいこともあり、気軽に立ち寄れる日帰り温泉や、足湯だけでなく、エステなどの美容施設も充実しています。

 

3-6.別府温泉

大分県の別府温泉は、「別府八湯」と呼ばれる市内8か所の温泉郷を中心に広がっている温泉地です。別府は火山活動が盛んな場所に位置し、別府温泉は鶴見岳と伽藍岳の地下のマグマが熱源と言われています。

街中のいたるところから湯煙が立ち上る独特の景観から「泉都」と呼ばれており、「日本の残したい風景百選」にも選ばれました。別府市内に数多くの温泉が湧き出ているため、少ない移動距離でさまざまな泉質の温泉を楽しめます。

 

3-7.雲仙温泉

長崎県の島原半島に位置する雲仙温泉は、日本で初めて国立公園に指定された雲仙天草国立公園にある活火山性温泉です。1991年6月の雲仙火山の噴火で発生した火砕流により、甚大な被害が出たことを覚えている方も多いのではないでしょうか。

間欠泉から白い噴煙が噴き上がる地獄のような光景は「雲仙地獄」と呼ばれ、観光スポットになっています。「雲仙地獄足蒸し」という足を置くと地熱や噴気を体感できる場所や、「雲仙焼」という焼物作りが体験できる窯元もあり、温泉以外でも楽しめる場所が充実しています。

 

まとめ

火山性温泉と非火山性温泉は、それぞれでメカニズムが異なります。温泉と火山の関係性を理解することで、これまでよりも一層温泉を楽しめるでしょう。

日本は世界有数の火山国であり、火山性温泉は全国各地に点在しています。温泉地によって泉質や効能は異なりますので、各温泉地の歴史を調べながら温泉巡りをするのもおすすめです。数ある温泉の中でも火山性温泉に興味のある方は、当記事で紹介した温泉地もぜひ参考にしてください。